企業が保有する土地のなかで、現在稼働していない「遊休地」や「低未利用地」。そのまま放置していても固定資産税や維持管理費などのコストが発生し続けるため、経営上の大きな課題となりがちです。
法人が保有する遊休地は、かつて工場や倉庫、店舗などの「事業用地」として使われていたケースも多いでしょう。事業用地とは、商業活動や生産活動を前提として利用されている土地を指します。
こうした事業用地の既存建物を活かして別のビジネス目的で使用したい場合に必要となるのが、「用途変更」の手続きです。
建築基準法では、類似用途間への変更を除き、特殊建築物へ用途変更を行う際、その用途に供する部分の床面積の合計が200m2を超える場合には「確認申請」が義務付けられています。また、都市計画法には「用途地域」という区分が設けられており、エリアごとに建築・転用できる建物の種類が制限されています。そのため、遊休地の活用ビジネスを検討する際は、まず該当する用途地域を事前に確認することが大切です。
用途変更を伴うビジネスを展開する場合、以下の手続きやリスクについて把握しておく必要があります。
用途変更の確認申請を行う際は、まず建築士へ相談し、現状の建物が変更後の用途に適合するかを確認します。申請には一般的に、確認済証や検査済証、既存図面などが必要です。
費用の目安は建物の規模や変更内容によって異なりますが、数十万〜数百万円程度となります。もし古い建物で検査済証が手元にない場合でも、建築士や指定確認検査機関などによる現地調査と報告書の発行によって対応できるケースがあります。
保有している遊休地が田や畑などの「農地」である場合、建物を建ててビジネス活用するには農地転用の許可等が必要になることがあります。農地から宅地へ変更する場合は農業委員会への許可申請も求められ、農地転用の手続きは行政書士に、現況変更後の地目変更登記は土地家屋調査士に依頼するのが一般的で、費用は5万円前後が目安です。
建築当時は適法であっても、その後の法改正で現行基準に適合しなくなった「既存不適格建築物」に該当する場合、用途変更時に追加の改修対応が求められることがあります。
用途変更の手続きを怠り、無許可のまま営業を開始してしまうと、懲役3年以下または罰金300万円以下の罰則が科される可能性があります。法人の場合は1億円以下の罰金となるケースもあるため、コンプライアンスの観点からも細心の注意が必要です。類似用途間の変更であれば確認申請が不要な場合もあるため、構想段階で早めに建築士や土地家屋調査士へ相談することをおすすめします。
ここでは、法人が更地や遊休地を活用する際によく検討される代表的なビジネスモデルをご紹介します。
初期投資を大幅に抑えられ、建物を建てるまでの「暫定的な活用」としても優れたビジネスモデルです。将来的な事業計画の変更や売却が生じた際にも、スムーズに撤退・原状回復ができるメリットがあります。
ECサイトの普及により、物流拠点や保管スペースの需要は堅調に推移しています。住宅地に向かない立地であっても、法人向けの貸倉庫や個人向けのトランクルームであれば、安定したニーズを取り込むことが可能です。
日当たりの良い広大な遊休地に向いています。居住インフラが不要なため、郊外の土地でも活用しやすいのが特徴です。売電収入を得られるだけでなく、企業の再生可能エネルギー利用というESG経営のアピールにも繋がります。
立地条件が良い(駅近や幹線道路沿いなど)遊休地であれば、建物を建設して法人向けに貸し出すことで高い賃料収入が見込めます。ただし、多額の初期投資が必要であり、景気の変動によって空室リスクが左右されやすい点には留意が必要です。
数ある遊休地活用のビジネスモデルの中でも、使われていない事業用地の有効な土地活用方法として現在注目を集めているのが「ガレージハウス経営」です。
ガレージハウスとは、1階部分が車庫(ガレージ)となり、居住スペースと一体化した賃貸物件のことです。なぜ法人の遊休地活用にガレージハウスが適しているのでしょうか。
一般的な賃貸アパートやマンションの経営は、少子化や物件供給過多による空室リスクが懸念されます。しかし、ガレージハウスは「車やバイクの愛好家」という明確なターゲット層に向けた趣味性の高い物件です。根強い需要に対して供給が不足しているエリアも多く、他の一般的な賃貸物件との明確な差別化を図ることができます。
ガレージハウスは、愛車を安全に保管し、メンテナンスを楽しむ趣味の拠点として機能します。そのため入居者の満足度が非常に高く、「一度入居すると長期間退去しにくい」という特徴があります。用途変更などの手続きを経て事業用地をガレージハウスに転用できれば、相場より高めの賃料設定でも空室リスクを抑え、長期的に安定した賃貸経営が期待できます。
工場跡地や郊外の事業用地などは、必ずしも駅から近い立地とは限りません。しかし、ガレージハウスの入居者は基本的に車やバイクで移動するため、駅からの距離よりも「幹線道路へのアクセスの良さ」や「カースペースの広さ」を重視します。事業用地の持つポテンシャルを最大限に活かしやすい点も大きなメリットです。
法人の遊休地は、ただ維持費を払うだけの負債ではなく、適切なビジネスモデルを選択することで大きな収益を生む資産へと生まれ変わります。用途変更等の適法な手続きをしっかりと踏むことで、活用の幅はさらに広がります。
「他にはない付加価値」を提供し、安定した収益基盤を作れるガレージハウス経営。自社の遊休地を賢く活用する選択肢として、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
